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 U20アイルランド代表 3-9 U20サモア代表(7位決定戦/2009年6月21日(日) at福岡・レベルファイブスタジアム)
 6月21日(日)、九州 福岡はレベルファイブスタジアムで繰り広げられる順位決定戦。まず第1試合は、7位-8位の決定戦。
 梅雨入りしてはいるものの、福岡はこれまでまとまった降雨がなかった。
 しかし、今朝方から「蒸し暑い雨」が強く降りつづいたが、キックオフ直前には止み、更に蒸し暑さを増す日本特有の酷なコンディションとなった。そしてピッチレベルでは風上・風下関係なく熱風が舞う。
 サモアのキックオフで始まったゲーム、幸先よくペースをつかんだのはアイルランド。今日のアイルランドは意識の違いがすぐにわかった。まずエリアを獲るキックがない。自陣からのPKもすぐに速攻し、「走って」敵陣に攻め入る姿勢。そして「組織的」な攻勢はみごと。ただ、「個」の強さに勝るのはサモア。
 アイルランドのモール(組織)に苦しんではいるものの、とにかく1人1殺のタックルがめっぽう強い。勢いをもって前進しているはずのアイルランドを、ビッグタックルで精神的に追い込む。アイルランドは敵陣でもらうPKを、仕方なくショット選択。
 >>>前半4分 アイルランド
 敵陣右中間22mライン外側から、#10マッキンリー PG成功 (アイルランド3-0サモア)
 サモアも前に出れば圧巻の機動力をみせる。トリッキーな動き、トリッキーなパス。しかしアイルランドも、その不規則を「線」で止める。組織的なディフェンスから切り返すアタックでサモアを翻弄するアイルランド、しかしミスで自滅・・・。アイルランドのミスボールに反応よく奪い攻めるサモアも、一切キックを使用せずにカウンターを仕掛ける。ただしこちらもミスでラリーが途切れる・・・。本当にお互いにボールが手につかない戦況。思い切って攻めあってはいるが、スコアはPGでの3点がシーソーされる。
 >>>前半26分 サモア
 敵陣中央10mライン付近から、#10セフォ PG成功 (アイルランド3-3サモア)
 蒸し暑い、だが予想外に風も強い、しかも舞っている。手から逃げるパスの軌道、つながらないライン攻撃、不安定なラインアウト、次第に反則からお互いにショットを選択してしまう戦況へ。だが、そのショットの撃ち合いも、割と安易な角度を外し合う状況。ようやくスコアが動いたサモアのPGで、ロースコア展開の前半を終える。
 >>>前半37分 サモア
 敵陣中央10mライン付近から、#15リレイシウアオ PG成功 (アイルランド3-6サモア)
 前半終了。スコアは、(アイルランド3-6サモア)。
 後半の開始時刻ごろ、また日差しが強くなってきた。蒸し暑い。仕切りなおしてフィールドに戻ってきた両者は、すぐに激しいクロスゲームを展開するも、のっけからミスを多発、前半からの苛立ちと消耗を隠しきれない。 迫力ある攻撃と防御を交互に繰り返す両者、互いに相手ゴール前まで侵入するも、あと一歩の詰めが甘く決定的トライが生まれない。組織的でかつ洗練されたムーブが美しいアイルランドのアタック、いやはや、相手のミスからカウンターを仕掛ける姿に元気みなぎるサモアのアタック。大胆に野生的に突破を図ってくる相手に、広範囲の網を張って対応するアイルランドの好ディフェンス、理にかなったセオリーで突破を図ってくる相手に、一発逆転のハードパンチで立ち向かうサモアの好ディフェンス。後半開始からそれを繰り返すこと約25分間、いまだゼロ行進。そして、痛恨の反則が起きたのはアイルランド陣内中央。
 「攻めてこい」と威嚇しながら10mバックするアイルランドに対し、「少しためらって」勝利のためのゴールポストを指差すサモア。この時間帯、非常に重く圧しかかるアイルランドへの「3点」。
 >>>後半28分 サモア
 敵陣中央10mライン付近から、#22ラウララ PG成功 (アイルランド3-9サモア)
 残り10分弱、「6点差」・・・。いつもの風景ならば、「ワントライ・ワンゴール」で逆転の劇的なシナリオを期待するだろう。だが、今日の両者の戦い振りを目の当たりにしている観客は、6点差のスリルを味わっている歓声ではない。まぎれもなく「両者」への健闘を称える興奮状態の歓声。
 この残り10分弱で、何度も攻守が入れ替わった、何度もゴール前まで攻め入った、何度も決定的なトライチャンスをつぶしあったアイルランドとサモア。どちらかに「運が傾く」という流れなど皆無、もてる力量のかぎりを出し合う様に釘付けになる。
 幾度もの「惜しいプレー」に対し、「うわ〜っ!!」っと我が身のごとく頭をかかえて悔しがる大勢の観客。プレーヤーと観客が一体となった、すばらしい光景だった残り数分間。
 そして、ついにラスト30秒。敵陣中央ゴール前でもらったPKでスクラムを選択するアイルランド。
 サモアFWがいち早くクラウチしている手前で、逆転を信じ固く結束するアイルランドFW 8人の輪。
 両者の気合い充分、タッチ、ポーズ、エンゲージ・・・。同時に試合終了を告げるホーンが鳴り響く・・・。
 その迫力と一発の立ち合いでもぎ獲ったアイルランドFW陣が、そのスクラムで更にPKを持ちかえる。速攻、展開、密集、そして痛恨のハンドリングミス・・・・・でレフェリーのホイッスル。
 ノーサイド。精根尽き果ててフィールドにうなだれる両プレーヤー。とうとう一度もお互いのインゴールを割らすことなく終了した激闘。ノートライゲームで試合終了。最終スコアは、(アイルランド3-9サモア)。
 しかし、観客の満足度はその大歓声と降りそそぐ拍手で充分にわかる。「世界」が福岡を訪れたこの期間、この瞬間に大満足している。両者へあたたかい祝福を。 
 
 
 U20アイルランド代表
 アレン・クラーク監督
 「今日のゲームも、大会期間中とまったく同じ事になってしまった。今までのパフォーマンス同様に、チャンスの時のミスが失点に繋がったからだ。しかし、今のチームにはいい素質を持った選手達がそろっている。これからしっかりとキャリアを積んで、きっといい選手に育ってくれると信じている」
 イアン・マッキンリー ゲームキャプテン「試合の前半、どうも心に火がつかなかった。後半は改善されたと思うが‥‥チャンスを物にできない。前回の試合とまったく同様で、ちょっとがっかりしている」
 ──今大会を通しての感想は?アレン・クラーク監督
 「そうですね。やはり落胆の意が強いですね。うまくいけば、本当にいい結果が出せたはずだ。しかし、素晴らしい日本の文化に触れられ、素晴らしい試合を体験できた。パフォーマンス・チャンスを活かせられなかった事に悔いは残ったが、満足している。
 イアン・マッキンリー ゲームキャプテン
 「とにかく5位狙いでいった。ゲーム中、いい所そして悪い所いろいろあったが、力及ばずがっかりしている。主催者側の、心温まるおもてなしには感謝の言葉以外何もない。これを機にチームもまだまだ精進してゆきたい」
 ──主催者側のもてなし評価すると言われたが、IRBへの報告書にもその通り謳うのか。アレン・クラーク監督
 「しっかりと素直に思った通り書きますよ!(笑)」
 
    U20サモア代表ヴィンセント・メレイセア監督
 「選手一人一人にまずは感謝したい。今年の目標は最低でも昨年大会同様の7位を保つ事。また、それ以上に上位に食い込む事であった。まずは7位を確保できて安心・安堵している。チームのみんなはよく戦ってくれたと思う。勝利して大会を終える、これ以上言う事はない」
 シアオシ・オットーイオナ主将「本当にプレッシャーのかかった試合だった。7位より上位に入りたかったが残念。しかし、昨年と同ランクで終えてホッとしてもいる」
 ──今大会を通しての感想は?ヴィンセント・メレイセア監督
 「大会は、IRB・日本ラグビーフットボール協会とがうまくマッチングして素晴らしかったと思う。
 ただ、5ゲームを17日間で消化するのはちょっと酷だ。どのチームも最後にはパフォーマンスが落ちるのではないか。期間を長くするか、登録人員を現行の26人から増やすか、再考願いたい。我々は多くの方に、もっといいコンディションで臨んだゲームを楽しんでいただきたいからだ。最後に、IRB・日本ラグビーフットボール協会に感謝して、この大会の謝辞としたい」
 シアオシ・オットーイオナ主将
 「とにかく日本滞在を楽しめた。安全で、なおかつ設備が素晴らしく、周りの方の良心に感謝するだけだ。
 ──スコア面では、今日もクロスゲームだったが。ヴィンセント・メレイセア監督
 「予選プールのスコットランド戦も今日も、いずれも相手は一流チームだ。我々の人材資源は限られているが、試合に勝つ事これが一番である。プレッシャーはいつもきついが、最後のゲームに勝てた事に満足している」
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